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はじめに 『事務処理ミス防止研修』について
セレア株式会社では年間担当させて頂きます研修件数の上位3つに入ります。
それほど全国の公的機関様(民間企業様も若干数みえます)において、事務処理ミスを防止する必要性を認識されているのだと考えます。
人間が事務処理を行う限り、ミスがゼロになるということはあり得ないでしょう。そのため、ゼロに近づけていくことが課題です。ではどうすれば事務処理ミスをゼロに近づけていけるのか。当記事ではこの点についてお話して参ります。
Ⅰ 事務処理ミス防止に向けての考え方
1.方法論を先行させない
まず、ミス防止に向けての方法論を先行して考えることを止めていきたいです。他組織の成功事例を知りたいとのお声をたくさん頂きます。成功事例を知ってどうされるのでしょうか。その方法を直接自組織に導入するためには知識や経験がいるでしょうし、何より完璧に再現できても問題解決となり得るかは別の話です。
方法論を探すというプロセスは最終段階であり、今から事務処理ミス防止に向けて本格的に考えようとしている組織がやるべきことではありません。と言いましても、研修終了後アンケートでは『方法論をもっと聞きたかった』とのお声を頂きます。問題解決する際の個人的特性なのだと思いますが、問題を解決したいのであれば、とにかく手当たり次第薬を飲むのではなく、その原因を追究することです。手当たり次第方法論を打ってみて、改善・変革の兆しがないと、人は無気力状態になります。それが一番怖いことです。問題は永久に存在することになりかねません。
2.必要な考え方、姿勢
ではどのような考え方、姿勢で臨むのか。
それは、事務処理ミスを発生させている主要因を特定して、その部分を叩くという考え方、姿勢です。その過程はいわゆる問題発見解決と言われるものです。当然にその能力が求められますので、実行すればチーム全体の問題発見解決能力が強化され、業務の生産性向上に影響を与えるという派生効果が期待できます。
では、何をどう進めていけば良いのでしょうか。
細かくみていきましょう。
Ⅱ インシデント情報を収集する
1.リスクの発生原因は自組織と他組織では異なる
自チーム・自組織には、他チーム・他組織とは異なるインシデント(あと一歩で事故に繋がる案件)が存在します。それは、設備の配置が他組織と違えば、人の能力や性格的特性もすべて他組織とは異なっており、自組織特有のリスクが存在するのです。そのため、『うちのチームではどんな状況下でインシデントが発生しているのか』と検証するためにインシデント情報を集めていきましょう。
ここで大事な点があります。それはインシデント情報を収集できる環境を作ることです。
次の点に留意してください。
①インシデント情報をあげた個人を絶対に責めない
②インシデント情報を収集する専用シート(フォーム)を準備して活用する
③一定のルール(専用シートの使い方、提出方法、その他注意事項)を定める
2.心理的安全性の確保は絶対
とくに『①』に留意します。勇気をもって声を上げた個人が責められた場合、その個人は2度と声はあげません。周囲も防衛本能から声をあげることはしないでしょう。結果、インシデント情報が収集できなくなり、事務ミス防止に向けて真の問題解決はできなくなります。この①については、組織人員が安心して仕事ができる環境である『心理的安全性の醸成』と密接に関係しています。むしろ逆なのです。事務ミス防止を行うために個人を責めないのではなく、心理的安全性を醸成するという組織として当たり前の動きの一つとして個人を責めないという考え方があるのです。そのため、心理的安全性を醸成しようとする動きがあれば、インシデント情報はたくさん集まってくるのです。
Ⅲ リスクの重大性と発生頻度で優先順位を設定する
集まったインシデントに対して手当たり次第アプローチすることは避けます。
インシデントごとに重大性と発生頻度に応じて優先順位を設定し、優先順位の高いインシデントから検証していきましょう。
1.発生頻度
発生頻度は読んで字のごとくですが、毎月発生なら高、年1発生なら中、数年に1度くらいなら低です。
2.重大性
重大性は影響範囲、人命への影響度、信用失墜度合いの3方向から検証します。
影響範囲は組織全体なら高、部門全体なら中、チーム内なら低です。
人命への影響度は命にかかわるなら高、入院なら中、応急処置なら低です。
信用失墜度合いには低はなく、一部のエリアのみなら中、それ以外にも及ぶなら高です。実質的に一部でも口コミで広がっていくので、信用失墜は絶対に避けるべき事案です。
こういった取り組みをリーダーが中心になって取り組んでいきます。リーダーは自身の仕事を部下にどんどん割り振り、このような重要性の高い業務に時間が割けるように業務管理の徹底が望まれます。
Ⅳ 優先度1位のインシデント(orアクシデント)の発生原因を追究、特定する
事務処理ミス防止の取り組みにおいて、このプロセスがもっとも重要です。時間がかかりそう、難しそうだと言って、このプロセスを割愛することは絶対にできません。
この取り組みは問題解決の原因検証部分のプロセスです。ここでの約束事は、全体からの検証と論理性の確保という2点を死守することです。
1.全体からの検証
全体からの検証とは、特定の入り口からしかインシデントの発生原因を見ずに、必要な複数の入り口から見るということです。例えば、人の意識が低下していたから事故がおきそうだったのではないか。この視点(入り口)は『人』です。ではなぜ意識が低下していたのでしょうか。業務量が本人のキャパを超えており、疲れ果てた結果、意識が下がったのかもしれません。そうすると、業務の振り分け方が適正かどうかという視点(入り口)が必要ですね。
事務処理ミス防止というテーマでは、全体を構成する入り口は決まっています。
① 人(人の意識やスキル、経験値)
② 組織体制(仕組み、ルール、マネジメントの機能レベル、業務量、ソフトウェア)
③コミュニケーション環境(情報共有のレベル感、何でも相談し合える環境度合い)
以上の3つが入り口です。
2.論理性の確保
上記3つの入り口ごとに、関係者からのヒアリング情報と一般的な掘り下げ方の両方で深掘りしていきます。深掘りする際には、〇〇だから□□になるという筋道(論理性の確保)を必ず確保していきます。そのようにして深掘りしていくと、細かな要因に影響を及ぼしている大きな要因が複数あるはずです。それがおおもとの原因です。それを消し去るための方法論を考え、打っていけばいいのです。ここで初めて方法論です。要因の掘り下げと因果関係の繋げ方には相応の経験値と思考力が必要です。こういった要素はOff-JT(外部教育研修)を通して正しいノウハウを習得し、現場で繰り返し活用することで、そのキレ味を増していってほしいと考えます。
Ⅴ 事務処理ミスの発生原因の大枠は『報告・連絡・相談・打合せ・確認の未徹底』
ここで、大事な前提をお伝えしておきます。
事務処理ミスの発生原因の大枠は『報告・連絡・相談・打合せ・確認の未徹底』です。
知りたいのは、なぜ『報連相打確』が徹底されていないのかという点です。ここを掘り下げ、要因の因果関係を明らかにし、おおもとの原因を特定してほしいのです。そのため、報連相が足りていなかったからミスが起きましたというのは、何一つ前に進めていません。それは分かっているのです。『あの日、あの時、あの場所で、報告していれば、連絡していれば、相談していれば、打合せしていれば、確認していれば、こんなことにはならなかった』
そうですね。次から起こさないようにしていきましょう。
だからこそ、そうなった背景が知りたいのです。それさえ分かれば、問題は半分以上解決しているのです。
まとめ
上記については、事務処理ミス防止研修で私がお伝えしているアウトラインです。実際にはもっと細かい要素をお伝えしておりますが、要約すると上記内容になります。
全国の組織において事務処理ミスは減少傾向には転じておらず、研修件数の増加傾向をみると、恐らく発生件数は増加傾向にあるのだと感じます。現場から人が離脱している組織もある中で、組織課題の数や難易度はあがり、現場の人員の心と体はすり減っています。このような中では事務処理ミスは起こりやすい状況だと考えます。事務処理ミスの防止を考えていくことは、チームの心理的安全性を醸成するとともに、問題発見解決力の向上にも貢献します。それは結果として、チームの生産性を上げ、チーム人員の心と体の疲れを取り除く要素になり得ると私は考えます。
今一度、本気で事務処理ミスについてアプローチしていきませんか。ぜひ、セレアとともに問題解決を図って頂けましたら幸いです。