1.はじめに

    戦略

    部下からの相談は、リーダーにとって重要なチャンスです。それは、リーダーが部下との信頼関係を構築し、組織全体の成果につなげるための重要な取り組みです。しかし、部下からの相談に適切に対応するためには、質問力が必要です。この記事では、部下からの相談にどのように対応すればよいかについて、プロ研修講師の視点から解説します。部下とのコミュニケーションにおける質問力の重要性や、質問力を高めるための具体的な方法について学んでいきましょう。

    2. 部下からの相談がもたらすチャンス

    講師実績

    部下からの相談を受けることは、リーダーにとって貴重なチャンスです。部下が自分の考えや悩みを率直に相談してくれることは、彼らがリーダーに対して信頼している証拠です。部下からの相談を受けることで、リーダーは以下のようなチャンスを得ることができます。

    (1)信頼関係の構築

    部下からの相談を受けることで、リーダーと部下との間に信頼関係が築かれます。部下が自分の悩みや問題をリーダーに打ち明けることで、リーダーは部下のニーズや期待をより理解しやすくなります。

    (2)部下の成長の支援

    部下からの相談を受けることで、リーダーは部下の成長をサポートする機会を得ます。部下が抱える悩みや課題に対して適切なアドバイスや指導を行うことで、部下のスキルや能力の向上に貢献することができます。

    (3)組織全体の成果向上

    部下からの相談を受けることで、リーダーは組織全体の成果向上につながるアイデアや改善点を発見するチャンスを得ます。部下が持つ知識や経験を活かし、リーダーとして組織の課題解決や業務改善に取り組むことができます。

    部下からの相談は単なる問題解決の機会だけでなく、リーダーとしての成長や組織全体の成果向上につながる重要なチャンスです。リーダーは部下からの相談を受け入れ、適切に対応することで、信頼関係の構築や部下の成長支援、組織の成果向上に貢献することができます。

    3. 質問力の重要性

    イメージの具体化

    リーダーにとって質問力は非常に重要です。なぜなら、質問力が高いリーダーは、部下とのコミュニケーションを円滑にし、信頼関係を構築しやすくなるからです。

    (1) リーダーにとって質問力がなぜ重要なのか

    リーダーにとって質問力が重要な理由はいくつかあります。

    ① 信頼関係の構築

    質問力が高いリーダーは、部下が自分に対して率直に意見や悩みを打ち明けやすくなります。部下がリーダーに対して信頼を感じていると、よりオープンなコミュニケーションが可能になり、信頼関係が構築しやすくなります。しかし、部下から話し始めることを終始待っているようでは状況は変わりません。もちろん、聴く姿勢が重要であり、リーダーがたくさん話をするという考え方は取るべきではないでしょう。ただ、質問しないと部下は何をどう話せばいいのか分からないのです。その点から、最適なタイミングと内容の質問を発信することで会話が進み、たくさん話せた部下は上司に信頼感を感じてくれるのです。

    ② 部下のニーズの理解

    質問力が高いリーダーは、部下のニーズや要望を正確に把握することができます。適切な質問をすることで、部下が抱える課題や悩みを明確にし、それに対する適切なアクションを取ることができます。大事なことは、部下の悩みや要望をそのまま受け取るのではなく、その根底にある本質的な悩み、要望について、質問することで抽出していくことにあります。
    『なぜそう思うのか』『なぜ〇〇が問題だと思えるのか』
    こういった点を質問して掘り下げていきましょう。

    ③ 意思決定の質の向上

    質問力が高いリーダーは、情報収集や分析の過程で適切な質問をすることで、より良い意思決定を行うことができます。適切な質問を通じて、問題の本質や背景を深く理解し、より的確な判断を下すことができます

    (2) 相談対応時の質問の機能

    部下からの相談に対応する際にも、質問することが重要な役割を果たします。

    ① 部下の話を深く理解するためのツール

    質問力が高いリーダーは、部下からの相談に対して適切な質問をすることで、部下の話の深い理解を促すことができます。適切な質問を通じて、部下が抱える問題や悩みの根本原因を見極めることができます。

    ② 部下の成長を促す手段

    適切な質問をすることで、部下が客観的に自分の考えや気持ちを認識し、自ら考える力を養うことができます。そのため、質問力が高いリーダーは、部下が自ら問題を解決し、成長するための手助けをすることができます。

    ③ 建設的な対話の促進

    質問力が高いリーダーは、部下との対話をより建設的に進めることができます。適切な質問を通じて、双方向のコミュニケーションが促進され、より良い解決策やアイデアが生まれやすくなります。

    このように、質問力が高いリーダーは、部下との信頼関係を構築しやすくなるだけでなく、部下の成長を促し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。リーダーが部下からの相談に対応する際には、質問力を活かして建設的な対話を行うことが重要ですね。

    4. 質問力を高めるための方法

    新任管理職の悩み

    部下からの相談に適切に対応するためには、質問力を高めることが重要です。以下では、部下からの相談に対応する際に役立つ質問力を高める方法を紹介します。

    (1) 聴くことの重要性

    部下からの相談に対応する際、最も大事な要素は聴くことです。聴くことで、部下が抱える問題や悩みを正確に理解し、適切なサポートを提供することができます。
    以下に、聴く力を高めるための具体的な方法をいくつか紹介します。

    ① アクティブリスニング

    部下が話している間は、注意深く聴くことが重要です。目を見て、身体を向けて、部下の話のポイントを繰り返したり、部下の感情に同調したりして、部下に寄り添い、徹底して聴きます。また、うなずいたり、相手の話のポイントを繰り返す、相手の気持ちに同調するなど、総じて、部下は自分の話を理解してもらえていると感じることができます。これもまた、上司と部下の信用信頼関係構築に大きく影響を与える動きになります。

    ② 要約と確認

    部下が話を終えた後は、話を要約し、理解した内容を確認しましょう。その結果、部下は自分の伝えたことが伝わっているかどうか確認でき、コミュニケーションギャップが発生しないことから、問題解決へ向けた最短の道のりを歩むことができます。

    ③ 感情の理解

    ①でも触れましたが、部下が抱える問題や悩みに対して共感し、感情を理解することが重要です。部下は自分の感情を上司に認識してもらえると分かると、より心を開いてくれる可能性があります。その結果、さらに双方の信頼関係が深まります。

    部下からの相談で、最近業務の負荷が大きいと伝えてきました。この際には、まずアクティブリスニングを行い、本人の悩みを正確に理解していきます。その後、本人の話を要約し、確認していきます。「そうすると、Aさんは最近〇〇業務や〇〇への配慮などが増えて、ストレスを感じているんですね。」と本人に伝えていきます。その結果、本人は「そうです」とうなずき、さらに自分の感情を説明してくれるようになります。もちろん、このようにうまくいくケースもあればいかないケースもありますが、まずは基本が実践できるようにしていきましょう。

    (2) 適切な質問の仕方

    適切な質問をすることで、部下が自分の考えや悩みを深く掘り下げ、より具体的な解決策を見つけることができます。以下に、適切な質問をするための方法をいくつか紹介します。

    ① クローズからオープンへの質問展開

    まずは部下本人が答えやすいように明確に答えられるクローズド質問をしていき、その後、部下本人に自由に答えてもらうオープン質問に展開していきます。
    この質問の流れは、最終的に部下が自分の意見や悩みを自由に話すことができるように促すための効果的な方法です。例えば、「いま〇〇業務の〇〇工程を進める上で問題に直面していますか?」(Yes)→「具体的にどのような問題に直面していますか?」という風に、クローズからオープンへ展開していきます。

    ② 掘り下げる質問

    掘り下げる質問は、部下が自分の考えや感情を深く掘り下げるのに役立ちます。例えば、「その問題がどのような影響を与えていますか?」などの質問があります。

    掘り下げる前には、まず何を掘り下げるのか、全体を構成する要素を漏れなく掴みます。例えば、『人の関係性の観点』と『業務遂行上の観点』といった具合です。部分的な要素を掘り下げたところで、他の掘り下げるべき要素にまったく触れていない状況では本質は見えません。

    全体を構成する要素を洗い出すことを『横展開』と私は呼びます。その後、各要素を掘り下げることを『縦に掘る』と呼んでいます。

    横展開したうえで、縦に掘る

    この点を念頭に置いて頂き、実際に掘り下げていきましょう。

    ③ 肯定的な質問

    肯定的な質問は、部下が自信を持って話をすることを促すための効果的な方法です。例えば、「あなたはどのような解決策を考えていますか?」などの質問があります。

    もちろん否定的な質問はときには部下の成長のために必要です。

    行動修正が必要な時には、『これまでの習慣で何を止める必要がありますか』『何が原因で〇〇が出来ていないと考えますか』など。

    一方で、次のような質問の仕方はNGです。
    『あなたは努力が足りませんね。なぜですか』→努力が足りないとは主観です。主観で話すのではなく、事実に基づき具体的に質問することが必要です。

    (3) フォローアップの方法

    部下からの相談に対して適切に対応するためには、フォローアップが重要です。フォローアップを行うことで、部下が提案された解決策を実行しやすくなり、問題解決の効果を高めることができます。以下に、フォローアップを行うための具体的な方法をいくつか紹介します。

    ① 約束の実行

    フォローアップを行う際には、部下との約束を守ることが重要です。約束した行動や対応を実行することで、部下がリーダーに対する信頼を深め、協力関係を構築することができます。

    ② 定期的な面談

    部下と定期的に面談を行うことで、本人の状況や進捗状況を把握し、必要に応じてサポートを提供することができます。定期面談は、部下とのコミュニケーションを強化し、信頼関係を維持するための重要な手段です。

    ③ フィードバックの提供

    フォローアップの際には、部下の取り組みや成果に対して適切なフィードバックを提供することが重要です。部下のポジティブな取り組みや成果を称賛し、改善の余地がある場合にはネガティブフィードバックを踏まえて具体的なアドバイスを提供しましょう。

    5. さいごに

    OJT

    部下からの相談はリーダーにとっての貴重なチャンスであることを再確認しましょう。部下が自分の意見や悩みを自由に話せる環境が整い、リーダーと部下との間に信頼関係が築かれることで、組織全体の成果を最大化することができます。

    リーダーは部下とのコミュニケーションにおいて質問力を活かし、部下の意見や悩みを理解し、適切なサポートを提供することで、信頼関係を築き、組織の成果を上げることができます。部下からの相談に積極的に耳を傾け、適切な質問を行い、部下との信頼関係を深める努力を惜しまないことが重要です。

    今回の記事が、リーダーの皆さまにとって部下からの相談への適切な対応方法や質問力の重要性を理解し、実践するための一助となれば幸いです。部下との信頼関係を築き、組織の成果を最大化するために、質問力を活かしたリーダーシップを実践していきましょう。

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    serea-ishikawa
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